「コロナ退職」をすべき人、しない方がいい人(トイアンナ)

こんにちは、トイアンナです。

私は新卒採用の就活支援を約10年していますが、今年は特に学生へ「なるべく早期に動き、内定を手にするよう」お伝えしています。

というのも、方々から採用減を示すニュースが届いているからです。

 

採用減は新卒だけでなく、中途にも大きな影響が出ます。

そこで、今回は新卒就活生へすでに起きている影響をもとに、中途にも起きうるインパクトをお知らせできればと思います。

転職市場に危機が起きている

私の周りには何度も転職をすることでステップアップしていく人材が多くいます。

私の出身が外資系企業のため、転職に抵抗なく動ける人が周りにも多いためです。

ですが、彼ら・彼女らは2月から転職活動を一斉に止めました。

 

何度も転職を繰り返した経験から、周囲は「いつが転職しどきか」を敏感に判断しています。

そして、今年は転職に向いていない年だと判断したのです。

急増するアベイラブル案件に「本を読むしかない」社員たち

「転職しどき」は、動物の本能で察知するような天性の才能ではありません。

ただ、周囲の人材は外資系コンサルティングファームの状況を見て判断したのです。

 

外資系コンサルティングファームは、「外資」と名前はついていても、取引先の大半は日本企業。

それも、日本の古き良き企業へIT技術を導入したり、海外進出の戦略を練ったりと「攻めの経営支援」をするのが主な役割です。

ここ数年は企業が大きな案件をどんどん発注し、それに合わせて外資系コンサルティングファームの社員数も爆増しました。

社員を増やしてもなお「今年は丸1日の休みが3日しかない」なんて悲鳴が聞かれたものです。

 

その外資系コンサルティングファームで、今春は大量にアベイラブルが発生しました。

アベイラブルとは外資系企業の用語で「いま、担当している案件がない人材」を意味します。

 

コンサルタントはプロジェクトごとに仕事をし、プロジェクトの合間には長い休みも取れるのが魅力。

従って、アベイラブル=会社のピンチ、とは限りません。

ですが、ここまで急激に周囲でアベイラブルが増えたのは、リーマン・ショック後に就職している私にとっても初めてのことです。

 

実際、コンサルタントとして働く友人はこう語ります。

 

「今年は案件がどんどん保留になった。

日本企業は4月末締めが多いから、そこで新規の予算を獲得できなかったのが原因だ。

新規案件がなければ、コンサルタントはアベイラブル(空き)として本を読むなど、研鑽を積むしかない。

実際に案件を獲得せねばレイオフ(クビ)もありうる管理職はあせっているし、明日は我が身だ。

特に日本は9月末決算の企業も多い。

コンサルティングファームで大量レイオフが発生するかどうかは、9月末決算次第だ

すでに人材削減を進めている外資系企業

そして、社員をクビにするよりも簡単なのは、これから採用する数を減らすことです。

すでに外資系コンサルティングファーム筋から、今年の新卒採用の人数を絞る見込みだと連絡が来ています。

 

いくら外資とはいえ、リストラは日本と同じ法規制に縛られています。

むやみなクビは法的に問題となりうるため、正社員を削減するよりも簡単な「これからの採用人数」を絞っているのです。

日本企業の転職危機は、半年後にやって来る

もちろんこれは、外資系コンサルティングファームだけが困っている話ではありません。

彼らの案件が枯渇しているのは、とりもなおさず発注元の日本企業が緊縮財政に走ったからです。

 

今はまだ「新型コロナウイルスの影響がどこまで続くか、とりあえず様子見」かもしれませんが、業界によっては大打撃を受けています。

業界別の新型コロナウイルスの影響ランキングでは「自動車」「商社」「エネルギー」「金融」と、いずれも日本の経済を支える柱となってきた業界が打撃を受けています。(出典:https://special-edition.xenobrain.jp/)

 

また、身近な分野でも「化粧品」「スポーツジム」「飲食」「アパレル」に関する業界はマイナス成長を覚悟しているでしょう。

こういった業界では、少なくとも2020年の間「攻めの経営」ができず、採用数も絞ることが予想されます。

その結果は、これから半年間で明らかになると見ています。

別業界・別業種への転職が難しくなる

さて、これらの影響が転職にどういう影響を及ぼすでしょうか。

まず言えるのは「別業界、別職種への転職」が難しくなる見込みです。

 

これまでの知識・経験が活きない業種での転職者は、新卒採用と似たハンデを背負います。

企業目線では教育コストが高い採用になるため、いわば「攻めの採用」になるわけです。

 

ですが、緊縮財政中の企業には、その余力がありません。

そのため、未経験者の転職案件は激減すると思われます

 

これから転職で「未経験可」とあった場合は、特定の儲かっている企業を除き「どんな事情があるか」を探っておきましょう。

特に”未経験だからと、給料を極端に下げられる”、”激務発給に追い込まれる” など、ブラックな転職案件ではないかを確認してください。

転職後の経験が詰めないリスク

実は、転職市場が狭まること自体は大きな問題ではありません。

どうせ内定できなければ、転職できないのはいつの時代も同じだからです。

しかし、不景気と好景気の差は「転職後」に出ます。

 

転職した業界が儲かっていれば、新しいプロジェクトに挑戦する権限や予算をもらえます。

そこで経験を積み、ステップアップすれば次の道が見えてくるわけです。

 

しかし、不況時には「現状維持」のプロジェクトが増えるため、新たな経験を積みづらくなります。

これが「事業撤退」、「案件を丸ごと畳む」業務まで経験できればある種特化したスキルを積めますが、細々と小さな予算のプロジェクトばかり任される場合、転職後に道を見失うかもしれません。

今は別業界・別業種でも転職できるラストチャンス

「それでも転職したい」

と、願うことはおかしくありません。

ただし、できれば「同業種・同職種」での転職を狙いましょう。

 

たとえば、ローソンの財務担当者がセブンイレブンの財務へ転職するのは、社風こそ違えど、そこまで苦労されないかと思います。

しかし、「出版社→商社」「営業→マーケティング」など、業界や職種を超えた転職はそれだけ苦労が増えます。

 

未経験分野で数年小さいプロジェクトしか任されず腐るくらいなら、今はすでに持っているスキルを磨くべき時期です。

駆け込みで転職エージェントからの勧誘は増える

次に、「転職エージェントの駆け込み勧誘」にうっかり乗らないよう気をつけてください。

この時期、転職エージェントは求人をたくさん送ってきます。

彼らには彼らのノルマがあり、「いま転職を成功させないと今年はヤバイ」と勘づいているからです。

 

そのため、通常よりも大手企業のオファーが増えたり、未経験でも夢を叶えるような職種を紹介してもらえたりするかもしれません。

しかし、転職エージェントは転職後の安泰まで保障してくれるものではありません。

自分が転職後に泣かないよう、大手の求人に飛びつかないよう「まずは先方の業績を下調べ」しましょう。

今、転職しても大丈夫な人の条件

今、絶対に転職してはいけないのは「別業種・別職種」へ飛び込もうとしている人たちです。

一方、全ての転職を止めろとは言いません。

たとえば、すでに経験がある業界へ出戻る場合は、知見を活かして活躍できる可能性があります。

また、リーマン・ショック期の不況をその業種で生き延びた方も、勝手が分かっているため覚悟を決めて動けるはずです。

 

また、このまま在職したら病んでしまうと感じている人も、転職活動は始めたほうがよいでしょう。

ただし、病んだ場合は休職をまず検討してみてください。

休職中にも転職活動はできますし、企業からは手当てが出ます。

 

制度について、詳しくは厚生労働省のページ(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/promotion_2.html)をご覧ください。

それでも転職したいあなたは「オンライン面談対策」を

実際に転職活動をされる方は、今期から必ずオンライン面談対策をしておきましょう。

転職エージェントの方ともZoomやWherebyなど、オンライン会議システムで模擬面接をしてもらい、フィードバックを貰ってください。

 

今年からはオンラインでの面接が一般化しており、すでにオンラインのグループディスカッションまで実施されているとの報告があります。

オンライン面接では、

「いつもよりハキハキ、トーンを上げて話す」

「接続テストを行う」

「グループでは自分の名前を名乗ってから発言する」

「カメラが顔を斜め上から撮影して、顔をすっきり見せるよう位置調整」

「ビデオの照明を順光(前から光が当たる角度)に手配する」

など、事前準備が必要です。

 

オンライン慣れした方がライバルになっても内定を得られるよう、たかが機材調整と甘く見ず、準備を進めてください。

また、回線が遅い人は今のうちに対策を練りましょう。

私もオンライン面談が増え、回線が遅くなったためWiFiルーターをアップグレードしています。

 

不足の事態を防ぐための準備を怠らず、「守りの時期」でもよい転職となりますよう、応援しています。

この記事を書いた人

トイアンナプロフィール

トイアンナ

外資系企業に数年務め、のちにライターとして独立。

最高月間50万PVを記録したブログ『トイアンナのぐだぐだ』や、その他10以上の媒体で連載中。6月に新著『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』を発売。

女性のキャリアや生き方やを主なテーマとして執筆活動を展開している。

Twitter:@10anj10