「了解しました」「承知しました」の意味と違い
日本語には似たような意味の語句、ニュアンスの近い表現が数多く存在します。
そのうえ敬語にも種類がありますから、正しく使うのは意外と難しいです。
今回とりあげる「了解しました」と「承知しました」も使い分けるのが非常に紛らわしい表現です。
敬語の使い方に慣れていない方々にもわかりやすいよう、順を追って説明します。
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目次
「了解しました」の正しい意味とニュアンス
「了解しました」も「承知しました」も、英語ではO.K.の意味です。
しかし、ビジネスシーンにおいて取引先や上司に対し「O.K.」は失礼にあたります。
「I know.」や「All right.」も同様です。(友人同士や目下に対しては使用します。)
「O.K.」「I know.」「All right.」これらには「自分はわかっている」という、自分中心のニュアンスが含まれています。
「了解しました」にも同様に、自分中心のニュアンスがあります。
「了解」という語は(自分が)物事の意味などを理解することです。
同じ「理解する」でも、自分自身にフォーカスしていて、相手への敬意などは含まないのが「了解」です。
また「了解しました」の「しました」はたしかに敬語ですが、分類としては丁寧語です。敬語の正しい使い方として、目上の人に対しては丁寧語ではなく謙譲語を使います。
「承知しました」の正しい意味とニュアンス
お客様や上司の主張・指示などを「ありがたく受ける」というニュアンスを含む表現が「承知しました」です。
敬語の分類としては謙譲語になりますから、相手を立てる表現です。
「承知」という語には「相手の依頼などを聞き入れ、承諾する」という意味が含まれています。
英語では「Certainly.」とか「Sure thing.」といった言い回しをします。
また「承知」は、理解しただけでなく実行もします、というニュアンスも含みます。
企業のカスタマー・センターとかお客様相談室などに電話された経験はお持ちでしょうか。
言葉遣いのプロとして訓練されている彼ら・彼女らは、お客様であるあなたの言うことに対して「承知しました」「承知いたしました」「かしこまりました」と答えますが、「了解いたしました」とは言いません。
ちなみに「ご承知のように」という言葉もありますが、「承知」は謙譲表現ですから、目上の人に使うのは本来、間違いといえます。
「了解しました」「承知しました」の正しい使い方
基本的な意味を押さえたところで、次にTPOを踏まえての正しい使い方を解説いたします。
「了解しました」の正しい使い方は?
「わかりました」の意味で「了解しました」を使ってもよい場合というのは、立場的に自分と同等または目下の相手に対してのみに限定されます。
部下が上司に何か報告すると、「了解です!」と返事をすることや、日本企業の風土として、好んで「了解」を使う上司は多いです。
自分も管理職になったら、部下に「了解!」と言ってみたい人もいるはずです。
「了解しました」と「了解いたしました」
「了解しました」の「しました」は丁寧語だと説明しました。
敬語として間違いではなくとも、お客様や上司には使うべきではないです。
では、「する」の謙譲語である「いたしました」を使った「了解いたしました」どうなのでしょうか。
「了解」は自分中心のニュアンスではありますが、本来は目下にしか使えないわけではありません。
「了解しました」ではなく「了解いたしました」であれば、目上に使っても間違いというわけではありません。
しかし了解という語は「目上に対して使ってはいけない」と信じている人が少なからず世の中に存在します。
「上から相手を見て許す場合に使う言葉である」と認識している人も少なからずいます。また「ぶっきらぼうである」と感じる人もいます。
いくら「これは謙譲語で、正しい使い方だ」と主張しても、相手がどう感じたのかが問題です。
敬語として間違いかどうかとは別問題です。
相手がどう感じるかがすべて
間違いでないのなら使ってもいいのではないかという考え方も理解できなくはありません。
ただ、ビジネスマナーとは「正しいか間違いか」の二択ではなく「相手を不快にさせない」ことが大切です。
セクハラやパワハラで考えてみましょう。
「自分はそんなつもりで言ったわけではない」という主張は世間では通用しません。
言われた側がどう感じたのか、その点でセクハラ・パワハラと判断されることになります。
「了解」は元来、無線用語です。
軍隊では無線を使用しますから、その印象で「了解」は軍事用語だと捉える人もいます。
そのため、ビジネスにおいて「了解」を用いることを回避する傾向があるのです。
もちろん目上の人でも、「了解~」という言葉を使われても違和感を持つとは限りません。
しかし、相手がどういう認識を持っているか分からない以上、ビジネスにおいては使用を控えることが無難です。
「承知しました」の正しい使い方は?
ビジネスの場では、余計なリスクを負わないため、お客様や上司に対して「承知しました」を使います。
「承知」には「理解しました」と「引き受けました」の2つの意味が含まれているため、上司の指示を「理解し実行する」ことになります。
また、相手の言い分や要求内容をすべて聞き終わらないうちに「承知しました」と言ってしまうのは、使い方として完全に間違いです。
「承知」は「引き受ける」の意味も持つため、あらぬ誤解を生じるおそれがあります。
では、リスク回避で目下の人に対しても「承知しました」を使うことはどうでしょう?
間違いではありませんが、それを聞いた人に妙な違和感を与えてしまいかねません。
「承知しました」と「承知いたしました」
「承知いたしました」は「承知しました」よりもさらに丁寧な表現です。
「承知いたしました」は二重敬語だという人もいますが、それは間違いです。
「承知しました」は直属の上司である課長や部長に、「承知いたしました」は社内の重役や社外の人に、のような使い分けをしても構いません。
ちなみに「かしこまりました」は「承知しました」の、より丁寧な表現です。
高級レストランや五つ星のホテルなどでは「承知しました」よりもむしろ「かしこまりました」をよく使っています。
「了解しました」「承知しました」の例文【場面別】
それでは、具体的な例文をいくつか挙げていきます。
わかりやすいように、日常的にありそうな場面を想定してみます。
「了解しました」の例文
「取引先が、電話でこう言ってきました!」
と報告してきました。
「その件は了解しました。あなたはこのまま作業を進めていてください。」
スタッフがあなたに、仕事上の悩みを打ち明けてきました。
「了解しました。仕事が終わったら、別室でゆっくり話を聞かせてくれますか?」
「いいね!大筋、了解です。」
「承知しました」の例文
「承知しました。本日は、お忙しいところ誠に失礼をいたしました。」
前の担当者にもよろしく伝えて、と言われました。
「承知しました。帰社しましたら私から◇◇に伝えておきます。」
「了解しました」「承知しました」の例文【対象別】
話し言葉以上に細かな配慮を必要とするのがビジネスメールです。
メールの対象別に、いくつか例文を挙げてみます。
「了解しました」のメール例文
「来週の金曜、19時に居酒屋▲▲▲、了解しました!」
「直帰、了解しました。お疲れ様。」
「承知しました」のメール例文
何か仕事を頼まれたときに「承知しました」と答えます。
もしくは「承りました」「かしこまりました」でも問題ありません。
「数量変更の件、承知しました。後程、修正した注文書を送らせていただきます。」
あなた宛てのメールで、上司の意向を探ってきました。
「上記の件、承知いたしました。機会をみて私から話をあげてみます。」
訪問したい旨をお願いしたところ、先方が都合のつく日時を指定してきました。
「承知しました。それでは来週10日金曜日の朝9時に貴社へ伺います。」
契約書のひな形を来週までに一読しておきたい、というメールがきました。
「契約書のひな形送信の件、確かに承知しました。本日中に対応いたします。」
「資料訂正の件、承知しました。こちらで修正しておきます。」
担当したホームページ内の表記について、他部門から修正の依頼がありました。
「ホームページの件、承知しました。早急に対応させて頂きます。」
出張中の上司から、翌週のプレゼン用資料を揃えておいてほしいと指示がありました。
「承知しました。プレゼンの前日までに資料を準備しておきます。」
「◇◇様、承知しました。明日の夕方5:00にお持ちしております。」
引っ越したので住所変更の手続きを頼まれました。
「住所変更の件、承知しました。次回から郵便物は新住所に送らせていただきます。」
納品した品が故障してしまった、とお怒りの様子です。
「それは申し訳ございません。承知しました。明日、修理の担当者とそちらに伺います。」
「了解しました」「承知しました」をビジネスやメールで使うコツ
上に挙げた例文で、ニュアンスについてはある程度、把握していただけたでしょう。
次は実際のビジネスシーンにおける「了解しました」「承知しました」の使い方について、いくつか押さえておきたいポイントをご紹介します。
「了解しました」を使うことで親愛さをアピール
若い世代では、友だちとの間で「了解」と言わずに略して「りょ!」だけで済ませたりもします。
これはお互いに信頼関係が構築されているからこそ、成り立つコミュニケーションです。
さすがに職場で「りょ!」は度が過ぎていますが、あえて「了解しました」とか「了解!」を使うことで、こちらの相手に対する信頼感や親愛の情を暗に訴える効果は期待できます。
職場の同期入社とか、すでに気心知れた仲の後輩との会話やSNSなどでは、「OKです」「わかりました」の代わりにあえて「了解です」「了解しましたよ」なども併用することでメリハリもつけられます。
ビジネスメールは話し言葉以上に要注意
ビジネスメールは、直接の対話や電話以上に細心の注意が必要です。
記録が残ってしまうこともありますし、何度も繰り返し読まれる可能性もあります。
お客様・取引先・上司や先輩には「了解しました」は使わず「承知しました」ないしは「承知いたしました」で統一します。
目下であっても、特に親しい間柄でなければ「了解しました」の代わりに「わかりました」でも構いません。
また返信するメールの件名を「了解しました」「re:了解です!」などと変更することはマナー違反です。
「承知しました」を避けたほうがいい場合
取引先やお客様、目上の人に対しては「承知しました」がいちばん無難な敬語ですが、例外もあります。
オフィシャルでいえば目上にあたる上司や先輩でも、頻繁に一緒に飲みに行く間柄とか、プライベートでも懇意にしている間柄であれば、「承知しました」ではどうしても固くなってしまいます。
そのような間柄であれば、シンプルに「わかりました」を使ってもいいでしょう。
相手とのこれまでの関係性の濃淡によって、判断して使い分けても構いません。
ビジネスマナーに絶対はありません
ビジネスマナーの正解はひとつではありません。
また間違いとは言い切れない例もあります。
例えば社外へのメールには「承知いたしました」を、社内では「承知しました」を使うよう推奨する人もいます。
同様に、文書内では「承知いたしました」を、口頭では「承知しました」を使うよう推奨する人もいます。
敬語として間違いかどうかと、実際の使い方はまた別の問題です。
また「了解しました」を目上に使ってはいけない、という考え方ですが、20世紀のビジネスマナー読本には見当たらない、という指摘もあります。
時代の移ろいとともに、敬語の使い方もマナーも変化していくものです。
常にアンテナを張っているのは容易ではありませんが、意識の隅に置いてください。
「了解~」「承知~」に関する表現まとめ
「了解~」は懇意な間柄の相手とだけに
ビジネスの場では「了解~」は間違いでなくとも、マナー的にNGと考えるべきです。
「了解しました」の正しい使い方は?の項で説明したとおり、「了解~」は人によって敬語としての認識に差があるからです。
ビジネスマナーの基本は、正しいか間違いか、ではなく相手に不快感を与えないことです。
学生時代と違って、職場で接する相手は敬語に関する価値観も千差万別です。
「承知~」がマナーとして良しとされていることには、相応の理由があるのです。
TPOで使い分ける
「承知~」はビジネスシーンでの受け答えでは、いわば万能選手のように便利です。
ただし目下の相手に「承知~」を使うことは若干の違和感を生むので、「わかりました」と「承知~」を併用することが望ましいです。
習慣を切り替えるには強い自覚が必要
「了解!」「了解しました」は、人によっては小学生の頃から使い慣れた語です。
一方、「承知」「承知しました」は学生時代、なかなか使う機会のない語です。
職場でも何気なしに「了解~」を使っていると自覚があるようでしたら、これからは「社会人として恥ずかしくないマナーを身につけよう!」と強く意識しましょう。